社会人になったらビジネスマナーを身につけるべきだという議論はよくある。看護師も社会人になる際には意識していることが多く、就職活動のときにはビジネスマナーを必死に学んでいるケースが目立つ。ただ、看護師にはビジネスマナーが必要なのかどうかもよく話題になっている点だ。広い意味では医療や福祉もビジネスだが、一般的なビジネスとは違い性質がある。国としては医療や福祉は国民にとって提供しなければならないサービスであり、国による支援を受けて行われているビジネスなのが特徴だ。当然ながら仕事の性質にも違いが生じるため、一般的なビジネスマナーとは異なる性質のマナーが求められているのが実態だ。共通点は多いので、ビジネスマナーを身につけた看護師が有利なのは確かである。しかし、ビジネスマナーをきちんと身につければ必要十分というわけではない。現場では医療スタッフ間の上下関係が複雑なことが多く、医師の立場がとても高いこともよくある。看護師のコミュニティの中でもわかりにくい上下関係があって、その現場でしか通用しないマナーを守らなければならないことも少なくない。基本的なビジネスマナーで患者には対応できても、医療スタッフ間の関係は必ずしもうまくいくとは限らないのだ。現場に順応して適切なマナーを身につけることにより、必要十分な対応ができるようになる。やや特殊な環境があることを念頭に置いて、ビジネスマナーは基礎と考えて働くのが重要だ。